永田町のはなし

政局のど真ん中、永田町でみたこと、きいたことをおはなしするよ

民進党・山尾志桜里 幹事長案をつぶしたのは文春?

民進党の前原新代表(といいつつ全く新しいイメージがない……)が初仕事の党役員人事でさっそくつまづいた。当初は若手起用・新しいイメージということで山尾志桜里(2期・愛知7区)衆議院議員を抜擢し、幹事長に据える意向と報道されたが、5日の両院議員総会を前にして断念したようだ。

当選2回の議員が幹事長ともなると文字通りの大抜擢のはずだったが、山尾幹事長案が党内のどこから出てきたのか、どこからリークされたのかわからないが、とにかく文字通りの新聞人事になってしまった。

しかしながら今日になってキナくさい話も聞こえてきた。今週の文春に山尾議員の不倫疑惑が掲載されるというウワサだ。不倫疑惑といっても、週刊誌ではメシ食っただけで「疑惑」になってしまうので、どの程度の疑惑かわからないし、そもそも掲載されるかも不明だが、大きなネタであれば前原新体制の危機管理が機能したといえよう。

今村復興大臣の辞任→後任は吉野正芳議員か

 今村雅弘興大臣(衆7期・比例九州、二階派)が二階派のパーティの挨拶で「(震災は)東北でよかった」発言をして更迭される事態になった。先日のブチギレ記者会見から3週間ぶり2回目のチョンボである。

 先日の記者会見での「自主避難している人は自己責任」や、今回の「東北でよかった」発言をみても、結局この人は当事者意識なんてなかったんだろうと思わせる。政治家として復興にかける情熱も、思いもなかったんだろう。地元は佐賀の人だから東北震災・復興といってもピンこなかったのかもしれない。(その分、仕える官僚としてはやりやすかっただろう)

 後任がとりざたされているのは吉野正芳・衆復興委員長(衆6期・福島5区、細田派)。福島原発被害地の選出だから、復興について思い切った政治判断はできないだろうが、今村大臣のような被災地の感情を逆なでする失言はないだろう。安倍総理は抜擢ではなく復興に詳しい即戦力を選んだ形だ。

 選挙の意味でも東北がらみの失言は非常に痛い。内閣と自民党への支持率が高い中で目立ちにくいが東北では自民が負けている。昨年の参議院選挙では東北6県(ともに改選1議席)のうち自民が勝ったのは山形のみで、のこりの5県、青森、岩手、山形、宮城、福島は民進・野党系候補が勝っている。政権・自民党としてもテコ入れが必要な状況で地元選出議員を復興大臣に投入したことになる。

 なお、今村雅弘氏は二階派だが、新大臣の吉野正芳氏は細田派。二階派は大臣のポストをひとつ失い、鶴保庸介沖縄北方大臣(参4期・和歌山選挙区)のみとなった。二階派はいわゆる「入閣待機組」がダブついており、当選7回の大臣未経験者が1人、6回が3人いる。今村氏失言で彼らは喜んだかもしれないけど、派閥のパーティが辞任の原因ならポストは他に流れちゃうよね。

(参考)

www.fnn-news.com

麻生派と山東派の合併で山東昭子氏は参院議長になれるのか?

 昨日、自民党麻生派の派閥のパーティがあったようで、マスコミ各社はこぞって自民党内の派閥の話を報道している。このブログでも何度も取り上げている通り、麻生派山東派や谷垣派に合流のオファーを出すなど、昨年からかなり活発に動いている。毎日新聞では連休明けに麻生派と山東派が合流に向けた会談をすると報じている

 さて、今日発売の週刊新潮では山東派の山東昭子会長(参7期・全国比例)は麻生派との合流で、自身の参院議長の就任を狙っていると書いてある。しかし、それは無理だろう。たしかに山東氏の参議院当選7回はぶっちぎりのキャリアだが、参議院の人事は派閥の論理で決定される。

 立法府の長である参議院議長と、自民党参議院会長は最大派閥の細田派(参院議員36人)のポストで、党参議院幹事長は第二派閥の額賀派(参20人)が持っている。麻生派(参10人)と山東派(参4人)が合流したところで参議院では14人の勢力にしかならず、これは参院国対委員長ポストをもつ岸田派(参14人)と同等程度だ。

 ただ、現議長の伊達忠一氏(参3期・北海道選挙区、細田派)の参議院議長就任を巡っては、当選3回という期数でも、細田派内に他に適任者がいないというだけで議長になれるのかと批判があったのは事実で、「山東議長」構想も麻生派山東派、プラスどこかと取引成立となればワンチャンスあるかもしれない。

(参考)

参議院自民党の各ポスト
 参議院議長=伊達忠一氏(3期・北海道選挙区、細田派)
 自民党参議院会長=橋本聖子氏(4期・全国比例、細田派)
 自民党参院幹事長=吉田博美氏(3期・長野選挙区、額賀派
 自民党参院国対委員長松山政司氏(3期・福岡選挙区、岸田派)

・『週刊新潮』4月20日号「麻生派<合併>計画に山東、甘利の虎視眈眈」

・ 自民:麻生・山東派が合併へ調整 大型連休明けに会談 - 毎日新聞

小池氏・都民ファーストの会の焦り

 都民ファーストの会・代表の野田数(のだ・かずさ)氏のインタビューが毎日新聞に掲載されている。毎日新聞も煽り立てるように「離党ドミノはむしろ自民」と野田氏の言葉を引用したタイトルをつけているが、政局ウォッチャーとしてみれば、離党ドミノどころか自民党はほとんど離党がない印象だ。はっきりいって小池知事も野田代表もこの自民党都議の離党が続かない展開は予想外だろう。インタビューの中で野田氏は「民進からは4人移籍で、自民党は11人。離党ドミノはむしろ自民」と言っているが、この表現に野田氏が強がっている感じを受け、むしろ焦っているんじゃないかと思った。以下に冷静に検証してみよう。

 野田氏のいう民進党の4人の移籍はいずれも都議の元職、現職のことだ。厳密には5人いる。増子博樹(元・文京)、伊藤悠(元・目黒)、田野上郁子(元・江戸川)、新井智陽(現・日野)、石川良一(現・南多摩)。繰り返しになるが、これらの候補は元民進党の都議の元職、現職だ。

 一方で野田氏が11人いるという自民党からの転籍者は、実はほとんどが市・区議会議員だ。都議で自民党からファーストに移ったのは2月に離党した山内晃氏(現・品川)、木村基成(現・小金井)の2人だけである。それ以降の都議での離党者はゼロだ。また、自民を離党して都民ファーストの公認を受けた元自民の市議・区議は9人いる。うち3人は例の小池知事おひざ元の「7人の侍」だから、知事選後に都民ファーストに移ったのは6人である。

 つまり民進党側から離党して移った者はほとんど都議経験者である一方で、自民党からうつった都議経験者は2人のみということになる。その地区に1,2名しかいない都議候補者が離党するのと、20人以上いる区議が離党するのでは性質が違う。市議・区議が離党して他党で都議の候補になるのは、上が詰まっているからという根本的に別の理由によるものだ。

 むしろ、自民党はほとんど離党者を出していない。現に定数2の港区には2人の現職が残っている。定数3の墨田区、目黒区や、定数4の江東区、新宿区、葛飾区も2人の現職が残っている。「離党ドミノ」なら彼らがぽろぽろと離党するはずにもかかわらず、2月以降、全く離党がないのが現実だ。

 大阪では大阪維新の会がすっかり定着した感あるが、これは、はじめの大阪市大阪府議選の際に地元に後援会組織を持つ自民党の地方議員が大阪維新の公認ででて、当選したため、地元後援会組織ごと大阪維新は手に入れた、だからその後も地域に根差して定着したとする分析がある。自民党の離党ドミノが起こらない限り、都民ファーストの会もこれまでの新党と同じように一時の突風で終わってしまう可能性が強いだろう。

(参考)自民党を離党して都民ファーストに移った市・区議会議員(敬称略)

豊島区議 本橋弘隆(7人の侍)
練馬区議 尾島絋平(7人の侍)
練馬区議 村松一希(7人の侍)
台東区議 保坂真宏
足立区議 馬場信男
葛飾区議 米川大二郎
小平市議 佐野郁夫
東久留米市議 細谷祥子
八丈島町議 山下崇

(参考その2)野田数氏のインタビュー
都民ファーストの会:野田代表「離党ドミノはむしろ自民」 - 毎日新聞

 

長島昭久氏の離党で確実にひとつ言えること

 民進党長島昭久衆議院議員(5期・東京21区比例復活)の離党の報道をウォッチしている。マスコミとしては何とか小池新党とくっつけて報道したいんだろうなというのがミエミエだが、一方の長島氏はくっつけられて報道されてはたまらないと、離党の原因は「共産党との共闘」を全面的に挙げている。今のところの報道は長島氏の言い分がやや優勢だろうか。

 「共産党との共闘が納得いかない」というのは、長島氏の一貫した政治姿勢をみても、離党に至る大きな原因のひとつだと思わせる。しかしこの時期に離党するということはやはりそれはタテマエだろう。野党共闘ウンヌンで、都議選前のこのタイミングであえて離党する意味はない。

 長島氏のこの先は自民会派入りも、小池新党の立ち上げも、どちらも対応可能な状態で、どちらに行くかは今のところわからない。しかし確実に一つ言えることは長島氏は民進党を「除名」されるということであり、逆に彼からすれば、民進党を未来永劫ごと見限ったということだ。

 割とこの話は深刻なんじゃないかと思う。考えてみれば、長島氏がやり玉にあげる共産党との共闘は長島氏(の選挙)にとっては悪い話ではない。直近の総選挙で長島氏は自民・小田原潔氏(2期、細田派)にわずか1500票差で競り負けており、第三の候補であった共産党新人は3万5000票を得票している。野党共闘すれば、まず間違いなく長島氏は選挙区で勝てるだろう。また、もしそんなに共産党との連携が嫌なら、党内で黙って潜っていればいいだけだ。潜っている間に蓮舫氏が失脚すれば共闘路線は見直される可能性があり、そして蓮舫体制が長く続くとは、誰も思っていない。

 そんな状況で離党を選ぶということは、長島氏は蓮舫氏の次の体制の民進党も捨てたということだ。長島氏は民進党に未来はないと読んだのだろう。

 このところ民進党は厳しい状況下におかれている。政党支持率は一桁だし、支援団体の連合の傘下の労組が自民支持を表明*1したり、都議選では都民ファーストの支持者を推薦するとも言っている。民進党は党勢の立て直しに目途がつかないどころか、党としてどういう国家を目指すのかも定かでなくなっている。

 今回の長島氏の離党は、今後どうするかというよりも、民進党は先も含めて、もうない、と確信したことが一番大きいのではないかと思う。

*1:化学総連が今年2月、自民支持を表明したと報道があり、その後、そんなこと表明してないと打ち消す報道があった。