永田町のはなし

政局のど真ん中、永田町でみたこと、きいたことをおはなしするよ

結局のところ茂木敏充政調会長はポスト安倍になれるのか

 最近、茂木敏充 自民党政調会長(衆8期・栃木5区、額賀派)が悪目立ちをしている。

 茂木氏といえば、マッキンゼーから政界入りした切れ者で、経産大臣、党選挙対策委員長政調会長と要職をこなし、キャリアから言えば将来の総理候補といえる。しかし、秘書の入退職が永田町で1,2を争うほど激しい、記者を怒鳴る・すぐ出禁にする、仕事が「非常に細かく」役人泣かせ、という"悪評"がかねてよりあった。仕事はできるが人柄がちょっと・・・という人らしい。

 1月19日の産経に茂木氏を少し批判的に書いた?ともとれる記事*1が載っており、こんなことしてこの記者大丈夫かなと思ったが、なんと1月19日は茂木氏は訪米中で日本にいなかったのだ。記事も内容のほとんどは茂木氏の実績をたたえて、ほんの少し周囲の評判を書いている(「慕う仲間が少ない」(ベテラン議員)「自分でちょこちょこ動くタイプで首相の器じゃない」(同)「茂木会長になれば派閥を脱退する人が出る」(中堅議員))。きっと読者に伝えたかったのはこっちの評判の方で、だけどそのままかくとアレだから、かなり遠慮して書いたらこんな記事になったんだろうなと思って笑ってしまった。しかも本人が訪米中に掲載。よっぽど茂木氏が怖かったんだろうなぁ。

 茂木氏への周囲の評価に関する記事が目立ち始めたのが昨年秋の党の人事で選挙対策委員長から政調会長になってからだ。同年10月に共同通信額賀派額賀福志郎会長(11期・茨城2区)が竹下亘衆議院議員(6期・島根2区)に派閥を譲る意向だと報道し、即座にそれを額賀氏が否定した。この一連の背景には派閥の実質オーナーである青木幹雄参議院議員が額賀氏を良く思っておらず竹下氏に会長移譲を迫り、一方で会長の座を守りたい額賀氏と、次の会長の座を狙う茂木氏が組んだとされた。この額賀派お家騒動以来、茂木氏の評判についての記事が増えたように感じている。週刊新潮の11月10日号*2には茂木氏を快く思わない青木幹雄氏が「徳の足りない人」と茂木氏をディスしている。

 額賀派のお家騒動が明るみに出ると、茂木氏は二階俊博幹事長(11期・和歌山3区)に近づく。二階氏は自らの派閥を拡張すべく、無所属議員を自民党会派に入会させていたが、茂木氏は二階氏へのゴマすりのために茂木氏が所管する政調会部会へ彼らの出席を認めたという*3

 ところが、2017年2月に入るとポロっと記者に話した(それとも意図があっておこなったのか)二階に対する「老人特有の症状が出ている」発言が週刊文春*4に載ると、翌週には二階氏側近の林幹雄衆議院議員(はやしもとお、8期・千葉10区、二階派)がこの記事の出所が茂木氏だと暴露。それが週刊新潮に載る。さらに『選択』3月号*5では一歩進めて、先日記事にも書いた化学総連の自民支持表明を、二階幹事長ではなく、茂木政調会長と面会して表明したことも確執になっていると報じている。また、二階幹事長が青木幹雄氏の意向をくみ取って、竹下亘氏を要職につけたことも茂木氏にとって気に食わないらしい。

 額賀派内でモメて、派閥外では二階幹事長と確執が明らかになった茂木氏は八方ふさがりのように思えるが、敵の敵は味方の原理を想像するに、次は二階氏と激しい主導権争いをしている菅義偉官房長官(7期・神奈川2区・無派閥)あたりと組んで状況を打開するかもしれない。いずれにせよ茂木氏はやすやすと潰されるほどのタマではないことは確かだ。