永田町のはなし

政局のど真ん中、永田町でみたこと、きいたことをおはなしするよ

中曽根の孫は世襲なのか(中曽根康隆氏群馬1区で出馬へ)

中曽根康弘元首相の孫の康隆氏が群馬1区で出馬を決めた。

【衆院解散】中曽根元首相の孫、康隆氏が出馬表明へ 衆院群馬1区、保守3分裂の可能性も - 産経ニュース

この話は2014年の総選挙でもすったもんだの末に出馬を見送った経緯がある。その後も山本一太参議院議員(4期・群馬県選出)のブログで「選挙区を中曽根家で私物化」とさんざん批判され、康隆氏もブログで反撃するなどの抗争(?)が続いていた。

群馬1区は県内で2番目に人口の多い前橋市を含む県中央部~県東北部にわたる選挙区で、自民党佐田玄一郎衆議院議員(9期、額賀派)だ。

ところがこの佐田さん、女子大生との援交スキャンダルが報じられ、それにブチギレた自民党県連が佐田氏の公認を本部に求めず、かわりに比例の尾身朝子衆議院議員(比例・1期)を担ぐ流れになっており、今回の選挙は分裂様相であった。そこにさらに中曽根の孫が入ってきて3分裂になった。さらにいえば過去2度の選挙では上野公成参議院議員(自民・2期)の女婿の上野宏史衆議院議員(1期)が出馬しており、ここでまた(たとえば小池新党なんかで)立候補となれば保守系4分裂の選挙構図になる。佐田、尾身、中曽根、上野と全員ルーツが自民党で、もはやわけがわからない。

ウェブの反応では中曽根氏の出馬は世襲だと批判が散見されるが、中曽根氏のルーツは高崎市で、中曽根康弘元首相の選挙区であった(高崎を含む)旧群馬3区は現在の小選挙区では4区と5区になっており、出馬する1区は文字通り「選挙区のそと」である。厳密には世襲ではない。

もちろん、親父の中曽根弘文参議院議員二階派)が6期目の群馬県選出議員だと考えると群馬1区内にも後援会組織があるだろう。しかしながら1区内の中曽根後援会のメンバーも、「参議院選挙では中曽根を応援するが、衆院選では佐田を応援する(していた)」わけで、今回の選挙ではじめて踏み絵を踏まされることになる。そして普通は地元の人にとって付き合いが濃いのは参議院議員ではなくて地元の代議士だ。また、もともと1区は中選挙区時代から佐田氏と尾身氏が争っていた選挙区で、前橋の人からすると「中曽根さんって高崎の人でしょ」というヨソ者感があるかもしれない。

はたからみると中曽根の名前が強いように見えるが、地元事情なんかを考えるとなかなか厳しい戦いになるのではないだろうか。

民進党・山尾志桜里 幹事長案をつぶしたのは文春?

民進党の前原新代表(といいつつ全く新しいイメージがない……)が初仕事の党役員人事でさっそくつまづいた。当初は若手起用・新しいイメージということで山尾志桜里(2期・愛知7区)衆議院議員を抜擢し、幹事長に据える意向と報道されたが、5日の両院議員総会を前にして断念したようだ。

当選2回の議員が幹事長ともなると文字通りの大抜擢のはずだったが、山尾幹事長案が党内のどこから出てきたのか、どこからリークされたのかわからないが、とにかく文字通りの新聞人事になってしまった。

しかしながら今日になってキナくさい話も聞こえてきた。今週の文春に山尾議員の不倫疑惑が掲載されるというウワサだ。不倫疑惑といっても、週刊誌ではメシ食っただけで「疑惑」になってしまうので、どの程度の疑惑かわからないし、そもそも掲載されるかも不明だが、大きなネタであれば前原新体制の危機管理が機能したといえよう。

今村復興大臣の辞任→後任は吉野正芳議員か

 今村雅弘興大臣(衆7期・比例九州、二階派)が二階派のパーティの挨拶で「(震災は)東北でよかった」発言をして更迭される事態になった。先日のブチギレ記者会見から3週間ぶり2回目のチョンボである。

 先日の記者会見での「自主避難している人は自己責任」や、今回の「東北でよかった」発言をみても、結局この人は当事者意識なんてなかったんだろうと思わせる。政治家として復興にかける情熱も、思いもなかったんだろう。地元は佐賀の人だから東北震災・復興といってもピンこなかったのかもしれない。(その分、仕える官僚としてはやりやすかっただろう)

 後任がとりざたされているのは吉野正芳・衆復興委員長(衆6期・福島5区、細田派)。福島原発被害地の選出だから、復興について思い切った政治判断はできないだろうが、今村大臣のような被災地の感情を逆なでする失言はないだろう。安倍総理は抜擢ではなく復興に詳しい即戦力を選んだ形だ。

 選挙の意味でも東北がらみの失言は非常に痛い。内閣と自民党への支持率が高い中で目立ちにくいが東北では自民が負けている。昨年の参議院選挙では東北6県(ともに改選1議席)のうち自民が勝ったのは山形のみで、のこりの5県、青森、岩手、山形、宮城、福島は民進・野党系候補が勝っている。政権・自民党としてもテコ入れが必要な状況で地元選出議員を復興大臣に投入したことになる。

 なお、今村雅弘氏は二階派だが、新大臣の吉野正芳氏は細田派。二階派は大臣のポストをひとつ失い、鶴保庸介沖縄北方大臣(参4期・和歌山選挙区)のみとなった。二階派はいわゆる「入閣待機組」がダブついており、当選7回の大臣未経験者が1人、6回が3人いる。今村氏失言で彼らは喜んだかもしれないけど、派閥のパーティが辞任の原因ならポストは他に流れちゃうよね。

(参考)

www.fnn-news.com

麻生派と山東派の合併で山東昭子氏は参院議長になれるのか?

 昨日、自民党麻生派の派閥のパーティがあったようで、マスコミ各社はこぞって自民党内の派閥の話を報道している。このブログでも何度も取り上げている通り、麻生派山東派や谷垣派に合流のオファーを出すなど、昨年からかなり活発に動いている。毎日新聞では連休明けに麻生派と山東派が合流に向けた会談をすると報じている

 さて、今日発売の週刊新潮では山東派の山東昭子会長(参7期・全国比例)は麻生派との合流で、自身の参院議長の就任を狙っていると書いてある。しかし、それは無理だろう。たしかに山東氏の参議院当選7回はぶっちぎりのキャリアだが、参議院の人事は派閥の論理で決定される。

 立法府の長である参議院議長と、自民党参議院会長は最大派閥の細田派(参院議員36人)のポストで、党参議院幹事長は第二派閥の額賀派(参20人)が持っている。麻生派(参10人)と山東派(参4人)が合流したところで参議院では14人の勢力にしかならず、これは参院国対委員長ポストをもつ岸田派(参14人)と同等程度だ。

 ただ、現議長の伊達忠一氏(参3期・北海道選挙区、細田派)の参議院議長就任を巡っては、当選3回という期数でも、細田派内に他に適任者がいないというだけで議長になれるのかと批判があったのは事実で、「山東議長」構想も麻生派山東派、プラスどこかと取引成立となればワンチャンスあるかもしれない。

(参考)

参議院自民党の各ポスト
 参議院議長=伊達忠一氏(3期・北海道選挙区、細田派)
 自民党参議院会長=橋本聖子氏(4期・全国比例、細田派)
 自民党参院幹事長=吉田博美氏(3期・長野選挙区、額賀派
 自民党参院国対委員長松山政司氏(3期・福岡選挙区、岸田派)

・『週刊新潮』4月20日号「麻生派<合併>計画に山東、甘利の虎視眈眈」

・ 自民:麻生・山東派が合併へ調整 大型連休明けに会談 - 毎日新聞

小池氏・都民ファーストの会の焦り

 都民ファーストの会・代表の野田数(のだ・かずさ)氏のインタビューが毎日新聞に掲載されている。毎日新聞も煽り立てるように「離党ドミノはむしろ自民」と野田氏の言葉を引用したタイトルをつけているが、政局ウォッチャーとしてみれば、離党ドミノどころか自民党はほとんど離党がない印象だ。はっきりいって小池知事も野田代表もこの自民党都議の離党が続かない展開は予想外だろう。インタビューの中で野田氏は「民進からは4人移籍で、自民党は11人。離党ドミノはむしろ自民」と言っているが、この表現に野田氏が強がっている感じを受け、むしろ焦っているんじゃないかと思った。以下に冷静に検証してみよう。

 野田氏のいう民進党の4人の移籍はいずれも都議の元職、現職のことだ。厳密には5人いる。増子博樹(元・文京)、伊藤悠(元・目黒)、田野上郁子(元・江戸川)、新井智陽(現・日野)、石川良一(現・南多摩)。繰り返しになるが、これらの候補は元民進党の都議の元職、現職だ。

 一方で野田氏が11人いるという自民党からの転籍者は、実はほとんどが市・区議会議員だ。都議で自民党からファーストに移ったのは2月に離党した山内晃氏(現・品川)、木村基成(現・小金井)の2人だけである。それ以降の都議での離党者はゼロだ。また、自民を離党して都民ファーストの公認を受けた元自民の市議・区議は9人いる。うち3人は例の小池知事おひざ元の「7人の侍」だから、知事選後に都民ファーストに移ったのは6人である。

 つまり民進党側から離党して移った者はほとんど都議経験者である一方で、自民党からうつった都議経験者は2人のみということになる。その地区に1,2名しかいない都議候補者が離党するのと、20人以上いる区議が離党するのでは性質が違う。市議・区議が離党して他党で都議の候補になるのは、上が詰まっているからという根本的に別の理由によるものだ。

 むしろ、自民党はほとんど離党者を出していない。現に定数2の港区には2人の現職が残っている。定数3の墨田区、目黒区や、定数4の江東区、新宿区、葛飾区も2人の現職が残っている。「離党ドミノ」なら彼らがぽろぽろと離党するはずにもかかわらず、2月以降、全く離党がないのが現実だ。

 大阪では大阪維新の会がすっかり定着した感あるが、これは、はじめの大阪市大阪府議選の際に地元に後援会組織を持つ自民党の地方議員が大阪維新の公認ででて、当選したため、地元後援会組織ごと大阪維新は手に入れた、だからその後も地域に根差して定着したとする分析がある。自民党の離党ドミノが起こらない限り、都民ファーストの会もこれまでの新党と同じように一時の突風で終わってしまう可能性が強いだろう。

(参考)自民党を離党して都民ファーストに移った市・区議会議員(敬称略)

豊島区議 本橋弘隆(7人の侍)
練馬区議 尾島絋平(7人の侍)
練馬区議 村松一希(7人の侍)
台東区議 保坂真宏
足立区議 馬場信男
葛飾区議 米川大二郎
小平市議 佐野郁夫
東久留米市議 細谷祥子
八丈島町議 山下崇

(参考その2)野田数氏のインタビュー
都民ファーストの会:野田代表「離党ドミノはむしろ自民」 - 毎日新聞